高速空気力学

FADS (Flush Air Data Sensing)

通常の飛行機には迎角やマッハ数などのエアデータ取得のためにピトー管が搭載されていますが,スペースプレーンでは大気圏再突入に伴う空力加熱により使用することができません.そこで,ノーズ先端表面に17個の圧力孔を設け,値を測定することでエアデータを推定するFADS(Flush Air Data Sensing)システムに着目し,研究を行っています.特に,従来システムと比較し,新たに以下の項目に取り組んでいます.

1.低速度下における推定精度を向上させるための差圧測定可能なノーズ先端内部形状(左上図)

2.配管の漏れやセンサーの故障が発生した圧力孔を検知し,取り除く耐故障性アルゴリズム(一故障許容,二故障同定)

また,実際の飛行環境を模擬した風洞試験(左下図)を行うことで,上記の有用性を確認し,同時に較正データを収集することで実用化を目指します.

 

翼型の最適化

旅客機やスペースプレーンが超音速域で飛行する際には空力中心が後退するために,維持できる迎角の範囲が狭くなります.迎角が制限されることにより飛行軌道の自由度が低下します.

本研究室では最適化アルゴリズムを用いて超音速域においても空力中心が後退しにくい翼型を生成する研究を行っています.以下の図のように迎角範囲を広げるために空力中心が前であることと揚抗比が高いという性能を両立する翼型を得ることによって,揚抗比と空力中心を両立する翼型の生成と目的関数間のトレードオフ関係を明確にすることができます.さらに,トレードオフ関係を司る翼型の幾何的な特徴等の考察を行い,設計変数の改良等に活かします.さらに,再突入時の熱問題にも対応できる実用的な翼型の生成やスペースプレーンの多様な飛行環境で必要となる性能を満たす三次元の機体形状の探索にも取り組んでいます.

最適化結果得られたトレードオフ関係と最適翼型

 

TSTO(Two-Stage-To-Orbit) の分離解析

 次世代の宇宙輸送システムとして,再使用性,高頻度運用性,ミッション柔軟性を兼ね備えた有翼式の二段式スペースプレーン(Two-Stage-To-Orbit: TSTO) が有望視されています.TSTOの分離フェーズでは,極超音速域における衝撃波等の複雑な流れに起因した機体間空力干渉が存在し,機体同士が接触するというリスクを低減するような分離方式が求められています.

本研究では,本学及び株式会社SPACE WALKERが実用化を目指している小型衛星打ち上げ用TSTOであるRaiJinを対象に,下段の有翼ブースター段および上段の無翼オービター段の相対位置をパラメータとする定常の数値流体解(Computational Fluid Dynamics: CFD)を実施し,空気力学的分離特性を評価して,分離に適した機体結合位置を検討しています.また,その結果を用いることで運動計算を含んだ分離飛行シミュレーションも行っています.

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